火
23
3月
2010
どういう縁か、サラリーマン生活のうち25年を2社の外資製薬会社で過ごしました。
その25年のうち、最初の11年間は地元北海道の札幌支店所属ということで営業をやっておりましたので、英語なぞ不要の、この腕一本の世界でしたが、あとの15年は本社勤務ということで急に「英語が必要だ」の世界になりました。
実際、マーケティングや研修、ライセンスなど、部署は移ったのですが、それでも何らかのかたちで英語と付き合わざるを得ず、「付き合う」というよりも本音としては「悪戦苦闘した」というほうが当たっているでしょう。
個人的な英語との格闘歴をここで御紹介するのが目的ではありませんが、正直に言って、30代の相当時間は、英語そのものよりも、「英語勉強法」を求めていわゆるhow
toモノの本を100冊、いや200冊は読んだ記憶があります。そんな時間があれば、「そこそこの勉強法」でも良いから英語学習自体に投資したほうが役立ったかも知れません。でもあえて言えば、「○○方式」という英語の勉強法の類はほとんど読んだり聞きかじったりした結果、今日に落ち着いたということで納得するしかありません。
そんな彷徨歴の果てに、今の現役マーケターのかたに少しは役に立つかも知れない英語勉強法のtipsを紹介してみます。
英語と言っても読む、書く、話す、聴く、の4種競技の様なものですから、これらの総合点が良くなければ、ビジネス上はどうしても苦戦を強いられます。特殊なケースを除けばプロダクトマネージャーとして外資企業で働くとなった場合に、恐らく4つのバランスは重要です。
特に書く、と話すという発信型の技術について考えますと、「動詞」の役割と重要性は際立っていると思います。
どこから英語を攻めるか、と言う時に会話とかリスニングなどは話題になりますが、「品詞」の事はそれほど前面にでてきません。
1)まずは名詞と形容詞
マーケティングの場合では、まず専門用語の多くは品詞で言うと名詞がほとんどです。この名詞は、inventory(在庫)やpublic
relation(広報)などのように、なかなか他の名詞で代用することが難しい性格を持ちます。ですから一個ずつ覚えなくてはなりません。でも、そのコトバ1つの守備範囲は通常それほど広くはないので、具体的な事象と結びつけたり、抽象名詞であればイメージしたりして、1対1に近い対応で頭にインプットして行けるという大きなメリットを持ちます。
また、excess inventoryや public relation strategyなどのように、その名詞を修飾する形容詞や、それと一緒に使う名詞の組み合わせを一緒に覚えてゆくことで、これらの名詞がまさにworking vocabularyとして実際にビジネスの場で使える モノに変身しやすくなることは良く知られているところです。
従って、語彙を増やそうと思ったら、まず名詞を核にしながら、形容詞+名詞、または名詞+名詞の形でビジネス上良く顔を出すコロケーションを「貯金」して行くのが、スタートとしては最も手がつけやすいと思います。
その次のステップですが、keep inventory lowやreduce excess inventoryなどのように、動詞+名詞のかたちで、当の名詞と相性の良い動詞を少しずつコロケーションとして増やしてゆくことが理にかなっていると思います。
2)コロケーションの重要性
このようにコロケーションに注目するのは、単語を個別に覚えても「実際に使えない」「単語をどう使うかを別途覚えなくてはならない」という弱点を補強するものです。一時期は、単語を文章(例文)中で覚えるという方式も盛んだったこともありますが、文章になると長すぎるものが多くて、文法力も必要になるなど、別な要素が入ってきすぎるので(それが総合英語力だという主張もあるでしょうが)、語彙力増強の観点に絞れば、2個か3個程度の単語を組み合わせたコロケーションで、どんどん覚えて行くのが最も妥当でしょう。
特に形容詞はそれに自然に続く名詞が何なのかが判らなければ実用性が低いことから、単独で覚えるよりはコロケーションで単語を自然に水ぶくれさせる方法を覚えるのに適しています。
さて動詞は、名詞と一緒に使うものを出して行くとkeep inventory lowのような他動詞+目的語名詞(+補語)の組み合わせや主語名詞+動詞のような多彩な組み合わせがありますが、あまり形や文法を気にしないで、辞書などから動詞と名詞の組み合わせ、そして副詞と動詞の組み合わせの例を拾い上げて補強して行くことが考えられます。
3)理想の大人向け辞書
コロケーションの辞書もいくつかあり実際に使っていますが、残念ながら1冊でもって、こうした要求の全てに対応してくれるものはなさそうです。ですから、英英辞典などもフル活用しながら自分で使ってみたいと思う用例を貯金してゆくことにしています。この領域であれば、もっと使いやすい大人の学習辞典があると有り難いなと感じることが多いのも事実です。
高校生や中学生向けの学習英和辞典があれだけたくさんの種類出ているのに、前年ながら例文や表現に配慮した大人向けの学習辞典がほぼ皆無なのは、出版社のマーケティング努力不足ではないでしょうか。
たとえば大人向けの(中型)英和辞典になると何故収録語数が10万語になるのかとても不思議です(高校生向けは4万程度が多い)。今や知らない「単語」は電子辞書でもwebの辞書でも、「意味にたどり着く」ことに困難はほとんどありません。ここは、20年前と明らかに違うところです。このように世の中が変わってきているにも関わらず、英語の基本的運用に難渋している大人が多いことに着目して、そこに向けた「学習辞典(例えば基本語1万語しか扱わない)」があれば、英和でも英英でもかなり面白いマーケティングが展開できるでしょう。
そうした辞書では、例文もコロケーションも、入試英語や学校英語、トラベル英語でなく、ビジネスの用法に絞ったものです。
最近では日向清人氏が、ビジネス用語に絞ったコロケーションの単語集を何冊か著わしてきましたので、今後の拡充に期待したいものです。
4)動詞の世界:基本動詞
さて、動詞に関しては2つの話題をカバーしておきます。
一つは「基本動詞」と呼ばれるものです。「基本」に関して定義があるわけではないので、範囲は色々ですが、狭く取れば数十で、多く取れば100~200後程度の動詞です。keepやtake、do、take、thinkなど中学で習うような基本的でしかも活用範囲の広い動詞を(ある程度)自在に使えるようになれば、英語に困らない、という考え方です。これはまったくその通りで、Plain
Englishとして有名ですね。
日本語の例で言えば「やまとコトバ」にあたる日常的な言い方をまず覚えることが重要で、動詞にもビッグワードのようなものがありますが、ふつうはできるだけ平易な言い方を「漢語」よりも優先して使うという至極当然なアプローチです。
この種のアプローチは、「基本動詞だけでここまで話せる」方式のテキストとして近年たくさん出版されており、かなり役立つものです。
ただ、日常会話では大変パワフルでも、仕事の上では、多少のプラスアルファが必要です。
基本動詞の用例を見ると、極めて寛容的な言い方を含む日常の事柄が、こんなに簡単な表現で表せることにnon-nativeとしては眼を見開かされることばかりです。しかし注意が必要なのは、慣用的な表現というのはズバリ決まった場面では使えても、汎用性(応用性)に関しては良くないことを覚悟して取り組まないとなりません。この種の本は、簡単な動詞でこんな気のきいた表現ができることを示すために慣用表現を多く紹介することがあります。
一例を挙げますとhit the spotという表現で、これは(ビールなどを飲んで)「いやぁ~、実にうまい」という感じで用いられますが、hitという動詞の通常の意味である「打つ」「襲う」とは関連するものの、hit the
spot自体はあまり拡張性がありません。乾いた喉を飲み物でうるおすような場面では超ピッタリはまるだけに、知っていると優れモノですが、(もちろん口語的な使い方であることも含めて)ビジネス場面での登場はあまり期待できないことに留意すべきでしょう。
そういった点に気をつければ、基本動詞をまずターゲットにして大和言葉のように平易な英語を使えるレベルにできるよう目指すことは動詞の語彙強化としてはお勧めできるものです。慣用表現に踊らされず、なるべく拡張性のある色んな例文で使えるものをコロケーションとして貯めてゆくのが良いでしょう。
5)動詞の世界:アクション動詞
動詞の次のレベルは私見ではアクション動詞Action verbsと呼ばれるものです。
これは、主に話し手自身が「何か行動を起こす」ことを表現する一群の動詞です。例としては、adjust、demonstrate、recognizeなどですが、私は英語で自分や組織のobjective(業務目標)を設定する際に、このような「アクション動詞」を現在形で書き出すものであることを知りました。また履歴書CVなどを書く際には、過去に自分がやった「実績」を明示する際に、こうした「アクション動詞」を過去形にして用います。またしばしば、それを形容する副詞と組み合わせることで、誇らしげに業績を列挙するのに利用するという使い方が多いようです。
マーケティングの場面では、戦略や戦術を記述する際に、objective(s)の記載時と同様に、通常の主語であるweを略して、こうした「アクション動詞」から文を始めるケースが多い訳です。
ですから自分のプランを記述する際に使えそうな種類のアクション動詞については、コロケーションを調べて使いこなせるようになることが重要です。もちろん、動詞である限りどんな動詞もそれなりに「動き」を伴うわけですが、observe(観察する)assume(仮定する)などのように自ら能動的に働きかける要素が少ない語はアクション動詞に含められないようです。
また基本動詞の一部ももちろん戦略などの記述に使えますが、アクション動詞のほうが多用されるようです。(日本語の場合でも「調べる」よりは「調査する」を使う傾向があるのと恐らく同じ理由ですね)
では「アクション動詞」は一体どれくらいあるのか?が疑問になりますが、これまで自分が接してきたマーケティング、ビジネス関係の英語の範囲から見るとおよそ100語から200語の範囲あたりだろうと思います。
ちなみに「茅ヶ崎方式国際英語基本4000語」(茅ヶ崎出版2000年)はそのタイトル通り、「英語学習の基盤となる4,000語を厳選」したものですが、ここに含まれる動詞がおよそ400程度であることから、アクション動詞としてはその半分以下の100~200と言うのは妥当な線だろうと思います。
また、別の例では、手元にありますKalen Lawson著 "The Trainer's Handbook 2nd Ed" (Pfeiffer, 2006) を見ますと、第5章の「インストラクションの目標を記述する」には学習目標(態度、スキル、知識)のそれぞれに良く使われる「アクション動詞」が例として50個ほど挙げられています。またその使い方として、「インストラクション目標は、色んな解釈をされる可能性の無い、特定のアクション動詞を用いて記述すべきだ」としており、understand、know、learnなどは行為を観察することが不可能であるとして不適切な動詞であることを明示しています。このテキストで例示されている50個のアクション動詞のうちマーケティングにも関連しそうなものを少々挙げますと
analyze、assess、choose、decide、assemble、construct、measure、operate、prepare、process、solve、distinguish、list、reproduceなどですが、これらを「知っている」から「使える」レベルにするのがマーケティングプランを書く秘訣だと確信します。
「英会話」自体が目標であるうちは、こうした言葉は理解さえできれば良い範疇でしょうが、ビジネス現場での発信型英語を考えると、これまであまり注目されていない「アクション動詞」の重要性にはもっと光があたっても良いように思います。